今年は例のウィルスのせいで、みんなで我が家に集まってのハロウィンはしない方向だったが、ウィルスとは関係ない人達が偶然にも2人来て、顔を合わせることになった。
一方は毎年来る異世界の鬼姫マキさん。彼女はうちのクローゼットから出入りする路を発見した為、最近は暇になるとたまに来る。
もう一方は初めて我が家に来た、わたしの上司であり半人半魔の早乙女ユキヲさん(と、魔剣フラガラッハ氏)。こちらの世界に来訪する異界の者共を狩る組織の中の、小隊長だ。
もちろん、マキさんのことはわたしのほうからちゃんと手続きを踏んで、ユキヲさんには報告してあったが、初対面にして二人の相性は最悪だった。
事の発端は今、大流行中の『鬼退治』を題材にした漫画だった。
マキさんが「人間が鬼にかなうわけがない」というようなことをお酒のせいか、口を滑らせた。
勢い、ユキヲさんも「だったら、やってやろうか」などと口走り、一触即発の事態に流石のわたしも、しばらくはただ、スン……となって何も言えず固まっていた。
だが、マキさんが「だからこそ、わたしたちが護ってやらないとな」と続けたため、ユキヲさんも賛同し、事なきを得た。
そして二人のターゲットはわたしに移ってしまい、むやみやたらに撫で回したりして、可愛がってくるのだった。